光のもとでⅠ
 券売所とは反対側の壁際、つまりはきちんと右側通行をしながら観察していると、見覚えのある手提げ袋が目に入った。
 それは薄紫色のしっかりとした手提げ袋で金色のマークが入っている。
 今まで私がいた場所、ウィステリアホテルのものだ。
 なんとなしに持っている人の顔を見ると、知っている顔だった。
「木田さんっ――」
 私ははじかれたように足を踏み出した。
 けれども行き交う人通りは思うように横断できない。
 券売所にたどり着いたときには木田さんの姿はなかった。
 私は慌ててお財布を取り出し、五百円玉を券売機に入れ適当なボタンを押した。
 切符を手に急いで駅構内に入ったけれど、改札口付近に木田さんの姿は見当たらない。
 どこっ――!?
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