光のもとでⅠ
「詳しく話すと、本当に長くなってしまうのですが……」
「かまわぬ。むしろ、状況をわからずしてわしの主観は述べられん。時間は気にするでない」
 朗元さんは、「続きを」と先を促した。
「その人は大きな会社の重役に就くことを約束されている人でした。私はそういうことにとても疎くて、ある人が教えてくれたんです。その人とお付き合いする権利が私にはないことを。健康体で元気な赤ちゃんを産める人じゃないとだめだって」
「それを真に受けたのかえ?」
「真に受けた、というよりは、納得してしまったんです」
「納得?」
「はい。私はそれまで誰かを好きになったこともなければ、誰かとお付き合いをしたこともありません。私の中では付き合うことと結婚をイコールで考えることはできなかったんです。でも、その人は付き合うことのその先に結婚を考えてくださっていて……。私はそこまで思考も心も追いつかなかったんです。それに加え、元気な赤ちゃんを産めるかなんて、本当に未知の域で……。私には持病がありますし、子どもを産むこと以前に、自分の身体で手一杯な状態です。――結婚は、互いの人生を背負うものだと思うから、私には無理だなって思ってしまったんです」
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