光のもとでⅠ
 心を落ち着けたところで弓を手に取る。
 弓道の、ひとつひとつの動作が好きだと思う。
 弓を引くときの緊張感、弓を放ったときに響く音。
 ここに存在するすべてが自分の一部のように思える。
 一手二射とも皆中。
 道場にいるときの感覚を常に持ち続けることができたら、「衝動」を抑えることは可能かもしれない。
 でも――。
 もし手をつなぐことが許されるのなら、翠を腕に抱くことが許されるのなら、欲するままに動きたい。
 俺はそう思うと同時に、「次」を考える。
 こうやって俺の欲求はどんどんエスカレートしていくのだろう。
 それは欲することのほかに、翠に求められたい、と――。
 自分が求めるばかりではなく、翠に求めて欲しいと願うのだろう。
 どうやら、俺は無欲な人間になどなれそうにはない――。
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