光のもとでⅠ
「……翠、中間考査のときにそんなことを考える余裕があったの?」
「……え?」
「……ますますもってわけがわからない。それであんな高得点を取ってくるなんて」
「だって……一度悩み始めたら止まらなくて……」
「そういう問題じゃない」
「……え?」
「自分から話題振っておいてなんだけど、あと二年半以上は考える時間がある。焦って考えなくていい」
 そう、ぶっきらぼうに言われた。
 あ……そうか。三年を切って二年ちょっとしかないわけではなく、まだ二年半以上はあるのだ……。
 その間に見つかるだろうか……。
 でも、その前に――私は二年半ちょっとで卒業できるのだろうか。出席日数は足りるのだろうか……。
「しばらく考えるのやめてマッサージに専念したら?」
 と、手を差し出させた。
「……はい。そうします」
 人のために何かできるのは嬉しい。
 その線で何かなりたいものを探せないだろうか。
 それが見つかったら一番に湊先生に相談しよう……。
 そんなことを考えながら先輩の片手を自分の両手を使って丹念にマッサージした。
< 773 / 10,041 >

この作品をシェア

pagetop