光のもとでⅠ
「どちらへ?」
 女医は振り返らずに答える。
「私、盗み聞きするような悪趣味は持ち合わせていないの。……隣、第二応接室にいるわ。何かあったら呼びに来て」
 そう言うと部屋を出ていった。
「相変わらず辛辣なことで……」
 彼女は、表ではもう少し控え目な態度を取るものの、藤宮の人間に媚び諂うということを一切しない。
 じーさんはそこをとても気に入っていた。
 紫さんの秘蔵っ子と言われるほどに医者としての腕も認められている彼女は、じーさんの専属医師にはもってこいな人材だった。
「言われても仕方ないんじゃないの? 俺だって相手が翠じゃなければこんなことはしない」
「おまえも相変わらずだな」
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