光のもとでⅠ
『わしもそのラグにお邪魔してよいかの?』
 彼女のいる場所に近づいたのか、より鮮明に彼女の声が聞こえるようになる。
 じーさんの声と大差ないということは、それだけ近くにいるのだろう。
 じーさんはもっともな質問をする。
 なぜ、この寒い中外にいるのか、と。
 彼女はとても彼女らしい答えを口にした。
『……暖かい場所にいたら、もっと逃げてしまいそうで……』
『……目が赤いのぉ。泣いておったのか』
 その言葉に唾を飲み込み目を閉じる。
 昨夜、やはり彼女は泣いていたのだ。
『お嬢さんは会うたびに悩み迷っておるのぉ……』
 前回じーさんが彼女に会った明確な日時は知らないが、あの日、彼女と藤山を訪れたときにはすでに会ったあとだった。
 そして、彼女が駅前に行く予定があったのは誕生日の前後のみ。
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