光のもとでⅠ
 こういう面では翠と雅さんは似ていると思う。
 育った環境は違えど必要なものは「人薬」。
 自分と真っ直ぐ向き合う人間――ふたりに必要なのはきっとそういうもの。
 俺が見つけたふたりの共通点は、共通点でもあり歴然とした差でもあった。
 俺は翠になら尽力できても雅さんにはできない。
 結果、雅さんに関しては人に委ねることになる。
 これは、自分がなりたくない、と思う大人にならないための一布石。
 もしくは、今の自分から逃げるための理由であり、未来の自分の枷となるもの。
 ――静さんはどこまで知っていたのか。
 あの人は何もかも知ったうえで放置していたように思える。
 雅さんの件が静さんに一任されていたのなら、雅さんの経歴を知らないわけがない。
 いったい何をどこまで知っていて、なんのつもりで今まで放置してきたのか。
 思考をめぐらせたところで答えの片鱗すら見つけられそうにはなかった。
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