光のもとでⅠ
 彼女は俺とふたりになった途端に黙り込む。 
 俺はそんな彼女に道端に咲く花の話を振りながら歩いていた。
 大学の敷地内に入ると彼女の目にはカフェが映ったらしい。
「少しお茶していこうか?」
 彼女は少し悩んでいるようだった。
「蒼樹にも連絡入れてさ、あたたかいものを飲んでいこう?」
 蒼樹の名前が出ると、パッ、と表情が明るくなる。
 なんて正直なんだろう。
「自分でかける? どうする?」
「自分でかけます」
 ポケットから携帯を取り出し、着信履歴からかける。
 ちょっと見えただけだけど、家族の名前ばかりが並ぶ着信履歴。
 家族と頻繁に連絡を取る彼女の携帯らしい。
 そこに、また俺の名前が連なるときが来るだろうか……。
 そんなことを考えながら蒼樹と話す彼女を見ていた。
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