光のもとでⅠ
 水に入った途端、波が引くときの砂がサラサラと形を変えていく様に驚いて、足を掬われる感覚にびっくりして私は泣いてしまった。
 エレベーターも同じ。あの独特な浮遊感に慣れなくて、エレベーターよりもエスカレーターを好んだ。
「誰でも初めて見るものや体験することには慎重になるわ。その一方、好奇心や探究心、そういう気持ちで挑める人もいる。そんな差、性格の違いよ。怖いと思うことはおかしいことじゃない」
 でも、先生……違うの。私は――行為ではなく秋斗さんを怖いと思ってしまったの。
 それはどうして……?
 訊こうにも訊けないでいた。すると、
「ここで話すことはほかに漏れることはないわ。胸につかえているものがあるなら話してみない?」
「でも、授業から逸れてしまいます」
「こういう授業は臨機応変に対応するものよ?」
 とてもとても優しい笑顔を向けられた。
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