光のもとでⅠ
 翌日の日曜日になると、家族に止められた。
 機械的とも言えるフレーズを延々スケールで弾かれると、一定時間なら耐えられるけど、それ以上聴いていると頭がおかしくなりそうだ、と――。
 ものすごく控え目に「やめてください」とお願いされ、ピアノを弾くのは時間を決めてすることにした。
 何よりも、弾いていて私が楽しくなかった。
 大好きな趣味なら楽しいはずなのに……。
 楽しくないならやっても意味はない。
「練習」という目的なら毎日弾くことに意味はあるけれど、「ストレス発散」という目的なら意味を成さない気がする。
「石鹸、作ろうかな。あとは……お散歩」
 石鹸作りをしたあとは大好きな写真集を見る。カメラを持って裏の公園へお散歩に行く。夜には大好きなオルゴールのCDを聴きながら詩集を読んだり、小さい頃に好きだった絵本を読んだ。
 けれど、何をしても気持ちが満ちることも、スッキリすることもなかった。
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