光のもとでⅠ
 けれど、テーブルの上にはすでにカトラリーなどが行儀よく定位置についている。どういうことだろうかと御崎さんに視線を送ると、声は出さずに唇のみを「こちらへ」と動かされた。
「……はい」
 きっと、「今はそっとしておきましょう」という御崎さんの気遣い。
 いつも思う。恐縮してしまうことも多々あるけれど、ウィステリアホテルやパレスで働くスタッフの人たちは心のこもった対応をしてくれると。
 お礼を言いたかったけれど、口にしたら御崎さんの気遣いが台無しになってしまう。
 ふと目についたのは料理にかぶせてあったシルバーの蓋。料理の蒸気で曇ったそこに、私は指を走らせた。「ありがとうございます」と一言伝えたくて。
 御崎さんはそれに気づくと、にこりと微笑んでから蓋をカートへ下げた。
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