光のもとでⅠ
 紫先生の目をじっと見つめてもそれ以上は話してもらえない。
「御園生さん、医者の守秘義務を察してくれないかしら?」
 会話に加わったのは藤原さんだった。
「いくら御園生さんでも家族ではない限り、患者の容態はそうそう話せるものじゃないのよ」
 きっぱりと言われ、少しだけ冷静になる。
 確かにそうだ。私は朗元さんの家族じゃない。ただ、発作を起こしたときに居合わせただけ。それだけ……。
「でも、これを聞けば少しは不安が和らぐんじゃないかしら?」
 藤原さんはいつもと変わらず無表情に近いそれで話を続けた。
「藤宮が経営する施設には医療設備が充実した医務室を併設しているの。会長がいつどこで重積発作を起こしても、その場に医師さえいれば緊急処置が行えるように。……つまり、パレスで発作を起こしても医師がその場にいれば病院でする処置と同等の対応ができるのよ。……ただし、さすがに大きな手術まではできない」
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