光のもとでⅠ

66

 深呼吸を挟みながらボタンを押す。そうするたびに携帯ディスプレイの照明が消えてしまう。そんなことを繰り返していた。たかが十一桁の番号と通話ボタンを押すだけの作業が、今の私にはひどく困難な作業だった。
「佐野くん……お願いがあるの」
『……さすがに俺が電話するのは無理だけど?』
 冗談なのか本気なのかわからない言葉に肩の力が少し抜け、指先の感覚が和らいだ気がした。
「そこまでずるはしない。あのね、数を……十、数えてもらえる? できれば一定の速さで」
 今日はツカサの声では無理だと思った。だから違う音色の佐野くんにお願いした。
「カウントダウンみたいだな」
「あ、ごめん。違うの」
 そうか、と思った。普通ならカウントダウンで十から数えるものなのだと。
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