光のもとでⅠ
「麻酔科での治療……局部麻酔、ですか?」
「痛みが強いときはそうなります。けれども、カルテを拝見させていただいたところ、まだ試していない薬がありましたので、試す価値はあるんじゃないかと思っています」
 久住先生は医療麻薬を使うと話してくれた。麻薬と聞くと、激痛発作が起きたときにされる静脈注射を思い出すため、いい印象はない。
「確かに……静脈に入れる注射ではこの系統のものは使っていましたね。ですが、注射のあとはどうでしたか?」
「薬が入ると急に全身の感覚がもやっとして意識がなくなる……とても強い薬に感じました」
「つまり、痛みは感じなくなったということですよね?」
「はい……。でも、薬が切れれば痛くなります」
「どうやら、あまりいい印象はないようですね」
 久住先生は朗らかに笑う。
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