光のもとでⅠ
「……なんとも言えないな。ここで詳しい検査はできないからな。ただ、聴診器で聞くだけでも、弁膜がきちんと閉じずに逆流していることは明白だった。僧帽弁閉鎖不全症だろうな。かなり苦しそうにしてたから、もしかしたら心不全を起こしてるかもしれない。なんにせよ、病院についたら精密検査のオンパレードだ。紫先生の所見では温存措置は難しいとのことだった。弁形成……最悪、弁置換手術になる」
「そう、ですか……」
「安心しろ。向こうには紫先生と清良女史がいる。滞りなく処置をしてくれるさ」
 紫さんや清良さんの腕を信用していないわけじゃない。ただ、翠が今、どれほど苦しい思いをしているのかと思うと、胸が締め付けられるようだった。
「司……? 私のことは気にしなくていいのよ? 気になるなら藤倉に帰ってかまわないわ」
 未だ蒼白な母さんに気を遣われる。
「いや……どうせ行っても会えない。それなら、予定通りパーティーに出席する」
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