光のもとでⅠ
「お茶。久しぶりに、翠葉ちゃんが淹れてくれたお茶が飲みたいんだ」
「あ、はい」
 彼女はスリッパをパタパタとさせて簡易キッチンへ向かった。
 こうして彼女の淹れたお茶を飲めるのはあと何回かな。
 君は俺が来たときはラベンダーティーを淹れてくれる。司が来たときには何を淹れるの?
 こんな話題にすら、きっと君は困ってしまうんだろうね。

 サイドテーブルに司が得た委任状が置いてあった。俺のかばんにも同様のものが入っている。
 カップを持って戻ってきた彼女に、
「司が補習の先生になるんだってね」
「はい……」
 彼女はどこか気まずそうに返事をした。
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