光のもとでⅠ
 蔵元や周りの人間には二週間くらいで帰国すると話してあるけど、実のところは半年くらいは帰らないつもりだ。今のご時世、国内にいなくても仕事はできるからね。
 こうやって物理的な距離ができれば、君はもう少し素直になれるんじゃないかな。
 俺がいなくなって司と過ごす時間が増えれば、ごく自然に君は司に手を伸ばせるんじゃないかな。
 少しの間、俺の存在を忘れてしまえばいい。
 最初こそ、俺がいない日常に違和感を覚えるかもしれない。けれど、しだいに俺がいないことが日常になる。そうなってくれればいい。
 今、この状況で自分を選んでほしいとは思わない。むしろ、何に迷うことなく司を選んでほしい。
 苦しんでる君を前に、アプローチなんてできないし、モーションなんてかけられない。
 いっそのこと、司と思いが通じてしまったほうが動きやすい。
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