光のもとでⅠ
「……ごっこ遊びじゃなかったよ。ちゃんとリハビリになってた。……昔話ができるくらいには――」
 その言葉に少しだけほっとした。
「リィだけは別……。リィは妹にしか見えない。女としては見れない――」
 口調が戻った……?
「……唯兄、側にいってもいい? 怒らない……?」
「……いいよ、っていうか、俺がそっちに行く。脳震盪起こしたあとに動くのはあまり良くないから」
 そう言って立ち上がると、唯兄はベッド際まで来てくれた。
「……まだ頭痛い?」
「っ……ズキズキするから許さないからね?」
「そんな警戒しなくったって出ていかないよ。どうせ、ここを出たところで蔵元さんあたりに捕獲されそうだし……」
「…………」
「あ、当たり? ま、湊さんがいる時点でそんなこったろーと思ったよ」
 そう言って笑う唯兄が纏う空気はいつもと変わらないものだった。
「唯兄、湊先生と蒼兄と蔵元さん、安心させたい……」
「そうだね、そうしよう……」
 ベッド越しに振り返った唯兄と目が合うと、いつものように笑ってくれた。
「俺、あんちゃん差し置いてこの部屋に入っちゃったし、あの人、本当に筋金入りのシスコンだよ」
「……でも、私は蒼兄のこと言えない。だって、私も蒼兄のこと大好きだもの」
「リィたちのは微笑ましいけどな……」
 唯兄は苦笑しながらドアを開け、リビングにいるであろうふたりを呼んだ。
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