光のもとでⅠ

初めてのバレンタイン Side 翠葉 05話

 十時になるとフロランタンが焼きあがった。けれども冷めるまでは切り分けられない。
 それに、お昼近くなればカフェラウンジが忙しくなる時間帯ということもあり、私は一度ゲストルームに戻ることにした。
「二時か三時頃に下りてこようと思うのですが、お時間大丈夫でしょうか?」
「わがままを聞いていただけるのでしたら、二時が嬉しいです」
「わかりました。では二時にまたお邪魔します」
 そう言ってゲストルームに戻った。
 キッチンでハーブティーを淹れ、タンブラーに入れるとすぐさま自室に篭る。
 ドアには、「入ってこないでね」の貼紙つき。これで唯兄以外には編み物のことは知られずにすむはず……。
「さて、がんばるっ」
 お昼ご飯までに一本できれば上出来。
 まずはお父さんのから作ろう。
 黒い毛糸にトルコキキョウの色に似た紫のモヘヤが絡んでいて、ほんのり心が和む。
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