魔女な生き方-ハルジオン-

ー…。

「……斗く……っ頼…君…頼斗君!!」


「うっ…ん…??」

すぅっと頭の中に意識が舞い戻る
真っ暗な視界にちょっとだけ何かが動く

瞼を開ければ蛍光灯の光が瞳に染みた
反射的にぎゅっと瞼を閉じれば、ゆっくりと目を開けたーー


「起きて頼斗君!!こんな所で寝ちゃ駄目だよ!?」

耳から入ってくる女性の声に顔が歪むのも感覚で分かる
寝起きの体にこの甲高い声は高ダメージ確定だ


「うるせぇよ愛奈(あいな)…」


「うるせぇよ…じゃないよ!!こんなソファーで寝て…風邪引いちゃうよ??」


「しょうがないだろ…新人が寝る所なんてここぐらいなんだし。」


「仮眠室は??」


「先輩方が夜の22時から就寝中です。」


硬い黒革のソファーの肘起きを枕にして眠ったせいか
ほんのちょっと動くだけで首に激痛が走る

実に不愉快な気分だ

寝不足で頭は痛いし
無理な寝方で体は痛いし
何より…


「そんなの駄目だよ!!新人って言っても仲間じゃない!!ちょっと文句言ってくる!!」


「なっ…おい!!」

この女が異常に面倒臭い事である。


すっと立ち上がりドンドンと踵を鳴らした愛奈がドアノブを握る
ダルい体が言う事を聞かない中、パキパキと骨の鳴る膝を伸ばし反射的にドアを押さえた

ドンッー…!!

少し開かれたドアはいきなり閉まって大きな音を出す
その音と背後に聳(そび)え立つ頼斗の気配に肩を跳ねさせた

「何す…る…」

少し不機嫌そうに振り返った愛奈と頼斗の顔は凄く近かった
たちまち愛奈の顔は赤く染まっていくのは頼斗の目にも映っていたー…。


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