誰かが始める断片劇
どれほどの時間、私は戦っただろうか?


「ハァ……ハァ……ハァ……」


私は、邪神を殺した。


聖剣で、邪神の心臓を貫いて。


それで、全部終わった。


私の使命が、終わった。


これで私は、解放された。


帰ろう。


そして、帰ったら、彼と………。


なのに、


「ハァ、ハァ……ハァ……ハァ……う、ぁっ………」


なんで、私の胸には、邪神の魔剣が、深々と突き刺さっているの?


「ぅ………ぁ」


足が、ぐらついて、そのまま倒れた。


「ハァ……ハァ……」


その拍子に、魔剣が、私の胸から抜け、ドッと、血が、溢れだす。


胸が、焼ける。


痛くて、苦しい。


血が、流れる。


止まってほしいのに、止まらない。


体から、熱がなくなる。


寒い。


とても、寒い。


体が、思うように動かない。


力が、入らない。


景色が、霞む。


何もかもが、ぼやけて見える。


「ハァ…………ハァ…………」


もう、痛いのか、寒いのか、よくわからない。


「………ハァ………ハァ」


かわりに、とても疲れた……。


それに、なんだか、酷く眠い。


「ハァ……ハァ…………」


……駄目、帰らないと。


「や…………く………」


……約束したじゃないか。


うん、約束した。


……帰ろう。


うん、帰るよ。


今、帰るよ。


「ぁ…………がはっ」


なのに、なんで動いてくれないんだろう。


なんで私は、こんなところで血を吐いて、血にまみれているんだろう。


……汚い。


洗い流したい。


……こんな私、見せたくない。


……見られたくない。


嫌われちゃうかもしれない。


「ハァ…………ハァ…………」


ねえ、リオン。


私、疲れた。


だから、少し、休んでも、いいよね?


「ハァ………ハァ……き、だよ…………ン」


そして私は、目を閉じた。


最後に思ったのは、


……彼が、こんな姿の私を見ても、嫌いになりませんように――――
< 27 / 42 >

この作品をシェア

pagetop