誰かが始める断片劇
「……」


一人、病室に残された私は、鏡に映る自分の姿を見ていた。


恐怖で色が抜け落ちたような、腰まで伸びた白髪。


右腕と右目を失った身体。


残された左目は、本来白であるべき部分が紅く染まった金色の瞳。


「まるで、私は化物だね」


右目と右腕は、あの戦いで失った。


髪の色と、左目の異常は、魔剣が刺さった時の後遺症。


もう、私は勇者として戦うことはできないらしい。


でも、私は、それで勇者という重荷がなくなって、よかったと思っている。


そして――


「ジュース買ってきたよー」


「ありがとう。でも、私は缶を一人じゃ開けられない」


彼が、私の傍にいて、


「……根性でどうにかならない?」


軽口を叩く。


「ならないよ」


「マジでならない?」


「うん、マジでならない」


「仕方ないなぁ……」


「ふふ、ありがとう」


あの時のような、穏やかな日々が、再び訪れた。
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