誰かが始める断片劇
「おっひさー」


そう言って、リオンは私の家に上がってきた。


三年ぶりに会ったリオンは、相変わらずだった。


変わったとすれば、私より低かった背が、いつの間にか私より高くなってることと、彼のいまいち整えきれてない黒髪が背中まで伸びてたことかな。


「……女の子みたいになったね」


「いや、三年ぶりの再開の第一声がそれってどうなの?」


「ふふ、でも、本当に女の子みたいだよ」


「うーん、なんかしばらく見ないうちに厄介なキャラになっちゃったね」


リオンは肩を竦めると、私の右腕を見て、目を見開いた。


「ハディスの右腕が生えてる!」


「リオン、これは義手――」


「いや、ハディス。いくら隻腕が不便だからって、人の腕を奪うのはよくないと思うよ」


「リオン。君は、私をいったいどういうキャラだと認識してるんだい?」


「ふむ、それを語るには、文庫本二冊ほどの量になるのだが、あえて短くまとめて、総合すると」


「うん」


「『クーデレ美少女』」


とても短かった。


文章にすると一行すら埋まらない。


というか、


「私は、クーデレなの?」


「ああ、君みたいなキャラを、世間ではクーデレ美少女と呼ぶんだ」

そう言ったリオンは、珍しく真顔だった。


ただ、


「私って、美少女なのかな?」


…………。


数秒の沈黙の後に、


「全国の女の子に謝りなさい!」


リオンに怒られた。
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