パーフェクトティーチャー
テーブルをたたいて激しくいいつのる。


普段、クールな大人の女を演じるかすみもさすがに動揺を隠せないでいる。


なおもおさまらず、ゆでだこのように顔を真っ赤にして立腹し、フォークとスプーンをテーブルに叩きつけた。


店のトーンに似つかわしくない音があたりに響き渡る。


やがてヴィトンをつかむと、かずみは逃げるように店を後にした。


頬に光るものがつたう。


店員と客、客がつれたチワワ、チワワの体にのったノミ、全員が同情と憐みを含んだ目を取り残された氷室に注いでいた。


目を覆いたくなる光景。


日曜の昼下がり。


渋谷で起きた惨劇。


その中でただ一人、ガッツポーズしている者がいた。


もちろんそれは月越ほたるだ。


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