君に届くまで~夏空にかけた、夢~
「さっきから何度も呼んでんのに。シカトすんなって。一緒に行こうぜ、相棒」


「あ……わり」


「どうしたんだよ。なんか疲れてるっていうか、顔色が冴えませんなあ、相棒よ」


「そうか?」


「そうだそうだ。何か悩んでんのか」


そうだ。


今、おれはちょっくら悩んでいるんだ、相棒よ。


「あー……」


昨日は勢いあまって鞠子ん家に押しかけて、あんなご立派な事言っておきながら、一夜明けて冷静に考えてみたら、この様だ。


鞠子にどんな態度をとればいいのか、本当に分からない。


「あ、分かった」


と誉がひらめいたとばかりに、おれの背中をバシバシ叩いた。


「寝不足! だろ!」


「はあー?」


「昨日の夜も蒸し暑かったもんなあ! 分かる分かる、分かるよ、相棒」


実はおれもあんまりよく眠れなくてさー、と言い、ぐあーとトトロみたいなあくびをかました誉を見て、がっくりした。


地響きみたいないびきかいてたくせして。


なんつうアホ面だ。


「誉、お前さあ……」


ふざけんなよ、と小突いてやったけど、誉から伝染してしまったのか、おれも顎が外れそうなほどの大あくびをしてしまった。


ぐあっ。


「……ああー」


朝日が目に染みるぜ。


ずひっと鼻をすすり、誉と他愛もない話をしながらとぼとぼ校舎に向かって歩いていると、


「しゅーう、ちゃーん!」


キンキン声に背中を突き飛ばされ、振り向くしかない。


この声は……。


「おおーい! 修ちゃーん!」


ひょろっこい手をぶんぶん振り回しながら向かって来たのは、花湖だった。
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