君に届くまで~夏空にかけた、夢~
8/23 23:28
From 夏湖
Sub 起きてる?
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修ちゃん、こんばんは。鞠子ちゃんから聞きました。
強化練習お疲れ様です。

今日ね、夏湖ね、修ちゃんちに遊びに行って来ました。
正雄じいちゃんも世津子ばあちゃんも、とっても元気です。

おやつに3人でとうもろこしを食べました。

すぅーっごくおいしかったです。

修ちゃんにも






「……食べさせたかったです。って。小学生の日記かよ」


ごろりと転がりうつぶせになってメールを読みながら、ぶはっと吹き出した。


「って……いてっ」


途端に、しかめっ面になる。


昨日からの強化練習のお陰様で、少し笑うだけでも全身がギシギシ軋む。


どこもかしこも、ひどい筋肉痛だった。


「殺されるかと思ったぜ」


ぶつぶつこぼしながら、夏湖宛てに返事のメールを打つ。


じいちゃんから買ってもらった生まれて初めての携帯電話も、ようやくスムーズに使いこなせるようになった。


桜花に入学してから、4ヶ月になろうとしている。


「地獄のような一日、で、し……でし……」


が、しかしだ。


強化練習の疲れが強烈な睡魔と化して襲ってくる。


ディスプレイの文字が2重3重になる。


だめだ。


体がベッドに沈む。


眠くてメールどころじゃねえや。


底なし沼に堕ちて行くように、意識が遠のいて行く。


明日にしよう。


明日、返信しよう。


と目を閉じた時、突然、背中がずっしりと重たくなった。


「うああああ……たまんねえなあ」


強烈なまどろみの中で、男のうっとり声が聞こえる。


Tシャツの中に、するすると何かが侵入してくる。


生々しい感触が、つつつ、と背中を這う。


「この、広背筋」


それは背中からうなじへ移動し始める。


気色わりい。
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