不良狼は一途に溺愛中

「なあ、“蓮”って呼んでみろよ。」


柚の背中に手を回して傍に引き寄せる。


ふっくらと柔らかな彼女の唇を指でなぞった。


「ひゃっ!蓮君っ、そろそろ教室に戻らなくちゃ授業に遅れ……」


「柚が呼ぶまでこのまま離してやらねぇから。」


「えぇっ!」


我ながら強引だと思うが、絶好のチャンスだから逃したくない。


自分の中で勝手にそう思いながら柚の言葉を待った。


しばし沈黙が流れる。


午後の授業の始まる時間が刻々と迫る中、柚はゆっくりと口を開いた。


「…れっ、れん……」


とても小さな声。


ようやく聞き取れるほどだった。



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