ゼロの行方
 艦内には至る所にマザーコンピューターのセンサーが無数に配置されている。それらは前クルーの会話、通信、行動を常に記録していた。平常時であればこのモニターはクルーの安全を保証するものであったが、マザーコンピューターが敵となって立ちはだかっている可能性がある現在、この監視はクルーを不利な状況に置く可能性がある。まさに『HAL九000型の反乱』(二00一年宇宙の旅 アーサーCクラーク著)の要に…。
 ジョナサンはレナードの糸を汲み、自分の端末を手した。
【これはおそらく『ゼロ計画』一部ではないかと思われます】
 レナードはそれを見てゆっくりと頷く。
「ミサキ、操縦をマニュアルに切り替えられないか?」
 レナードは努めて冷静に言った。
 ミサキは自分のコンソールを操作するが、状況は変わらなかった。
 そのとき、リサの高い声がレナードに向けられた。
「艦長、チャンネルが艦隊本部に開かれています」
「スクリーンに」
 リサの操作によってブリッジのメインスクリーンに艦隊本部のホライズン提督の姿が映し出された。その直後、マザーコンピューターの人工的な声がブリッジ内に響いた。
「こちらは『タイタン』のマザーコンピューター。本艦は『レアⅡ』を壊滅されたウィルスによって艦内が汚染されています。現在医療コロニーに向かって進路をとっています。二0・00時にハイパードライブに入ります。収容を要請します。繰り返します。こちらは…」

 その裏でプライベートチャンネルを通じて別のメッセージが艦隊本部に送られていた。
「『ゼロ計画』第二段階終了。最終段階に移行します…」

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