に じ い ろ~Rainbow Days~
「人殺し」
すれ違いざまに囁かれた言葉に、私は思わず振り向いた。
そこには、たくさんの人。
みんな私を見ている。
1人は、汚いモノを眺めるみたいに。
1人は、恐怖に顔を歪め。
1人は、まるでこの場を楽しむようににやついている。
……私ったら、慣れてるのになんで振り向いちゃったんだろう。
先を急ごうと、踵を返した。
「…人殺し!」
また聞こえた、気味が悪いほどに弾んだ声。
ヒュッと息を吸い込んで、進もうと思っていたはずなのに…足は動かないまま。
「…人殺し」「人殺し!」「ひっとごーろしっ!」
瞬く間にそれは、悪意の合唱へと変わっていった。