海宝堂〜海の皇女〜
9.海底の国
リュートが水面からいなくなって、残った3人はぽかん…と立ち尽くしていた。

「……………はっ!
リュートっ!?」

いち早く我に返ったシーファが泉を覗きこむ。

「ちょっと…嘘でしょ?」

「助けないとっ!」

シーファはそう言うと、泉に飛び込んだ。

「俺達も行くぞ。」

ガルが続いて飛び込んだ。
リュートはかなり泳ぎが上手い。ある程度の時間は潜水ができ、普段ならガル達は心配しないだろう。
しかし、今回は沈み方が異常だった。
水の中に何かがいる可能性がある。
もしそうだったらシーファだけでは危険だ。
ニーナははぁ〜とため息を漏らして泉に飛び込んだ。


シーファは泉の中でリュートの姿を探した。
泉はやはりただの水たまりではなく、洞窟になっていて横穴に続いていた。
そこにイルカの尻尾とリュートの足が消えていった。

(リュート…ちょっと待って…)

シーファが横穴に進もうとすると、ガルが肩を掴んだ。

(ガル、リュートがイルカに…)

シーファは横穴を指差した。
ガルは後から来たニーナと目を合わせると、シーファと共に横穴に泳いでいった。


横穴に入るとずっと遠くに魚影と人影が見えた。
さっきのイルカがリュートの腰のベルトをくわえて、洞窟の中を進んでいた。

(あのイルカ、なんでリュートを…)

(この洞窟、一体どこに続いてる?)

もしこの洞窟がまだ続いているとしたら、リュートだけでなく自分達も危険だ。
見たところこの洞窟は水、いや、海水でいっぱいだ。

ガルは泳ぐスピードを上げた。
ニーナはその速度についていけそうもなく、ガルに手を引いてもらっていたが、シーファはそうではなかった。
ガルの横にぴったりと並び、しかし、ガルより滑らかに水の中を進んでいた。

そんなことを考えながら進むと、洞窟は大きく曲がっていた。

後を追ってガル達も曲がると、目の前に美しい海底が広がっていた。
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