悲哀少女



「お婆ちゃんの家は、 一人で行けるでしょう?」

「でも、森には人喰い狼が居るって、 町長が言っていたよ」

「いい子にしてたら、大丈夫」

「そっか。 それじゃ、行ってくるね」

可愛らしいブーツを履き、この小さな町はずれにある深い森を目指し、彼は元気よく家を後にした。

森には人喰い狼がいるから、夜に一人で入ってはいけない。
町長は何度も何度も、子供たちにそう言っていた。

( でも、あの森に狼はいないよ )

誰かが、そう言う。

( 狼は狼でも、人間の狼だからね )

その言葉の意味を、まだ幼かった彼たちが理解する事は、難しかった。
そしてそれは今も変わらない。


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