夏きらら



 その日、隆史と祈は畳の間で眠った。

 寝転んだまま昼間それぞれに見てきたものの話をしたり、学校の様子の話なんかをした。

 祈が知りたいかと思って、隆史は学校での早瀬の話もした。制服の早瀬は可愛い、とか…。

「あー…いいな。隆史くん。僕も早瀬ちゃんの制服姿見たいー」

「送ろうか?向こうに帰ってから。早瀬の写真」

「え…。いいのかな。早瀬ちゃんがいいならいいんだけど」

(まだ、知らない扉がある)

 祈は早瀬という存在の向こうに世界が広がっているような感覚にとらわれていた。

「連れて来たかったな…」

 微睡んで眠りに落ちようとする前──隆史がそんなことを呟いた。「え?」と祈は聞き返す。隆史は話してくれた。

「彼女。やっぱり写真なんか見せるより本物見せたかったなとかね。同じ空間で過ごせるの、絶対違う。相手の表情見えるし」

「彼女、名前なんて言うの?」

「ゆま。仁科由真」

「にしなゆま…」

 沖縄育ちの祈には聞き慣れない名字だった。名前がそうだと、やっぱり早瀬や隆史は向こうに住んでいるんだなという気分になってしまう。

「隆史くん…」

「ん?」

「もう一度沖縄に来なよ。今度は彼女連れて」

「……」

「僕も早瀬ちゃんに会いに行く」

 横になったまま祈の表情を窺うと、祈は真っ直ぐに言い切った。

「僕が早瀬ちゃんに会いに行くのが先か、隆史くんが彼女を先に連れて来るか、勝負しよう」

「こんなことで勝負?」

「好きな人と一緒にいたいの、当たり前じゃない?うちの親なんか離婚してるから、僕は出会いも別れも後悔したくない」



< 39 / 39 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

時は今
紅茶飴/著

総文字数/433,562

恋愛(純愛)601ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
双子のような従兄弟同士 由貴と四季は 春休みの学校を訪れ 『姫』と呼ばれる 少女に出逢う ひとりのヴァイオリニストの死 そこから廻り出す 運命の歯車 片想い 報われないもの 死と命 そこから結ばれてゆく絆 かけがえのないものを、 君に。 2012.3.1.~
十五の詩
紅茶飴/著

総文字数/90,564

恋愛(純愛)129ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
神童と呼ばれた。 いつのまにかそう呼ばれていた。 でも自分は そうなりたくはなかった。 神学校に通うユニスは 「神」に 複雑な想いを抱いている。 そこで出逢うひとりの少女──。 十五の心と恋模様を 描き出すファンタジー。
不思議電波塔
紅茶飴/著

総文字数/165,669

ファンタジー227ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
小説を書いていた俺に ある日 不思議なことが起こり始めた 「たすけて」 誰かからのメッセージ それは 小説の中からの悲鳴だった そして 物語はやがて 俺ではない者の字で 塗り替えられるようになった 2012.6.1.〜2012.9.15.

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop