怪談短編集



 奥のカウンターに腰掛けた老人が、僕の方をジロッと睨んできた。


「何の用だ?」

「あの、この本を取りに来たんですけど」

「あぁ、ジェームズさんの…で、君は?」

「ジェームズは僕の祖父です」


 老人は、ペッと唾を吐き、僕の持つ注文書を引っ手繰った。


「この本は、先月、届いてるよ」

「いくらですか?」

「何で君が買うんだい?君には関係ないだろう?」

「関係あります!」


 僕は大声で叫んだ。


 老人が、眼を丸くした。


「その、悪魔が僕んちにいます!!!」


 彼は、カウンターの奥の棚から、本を一冊抜いた。


「20$だ。一つ、警告しよう。悪魔祓いをするときは絶対に近くに動物を寄せ付けるな。逃げ出した悪魔が、他の近くにいる動物に乗り移るから」




< 161 / 195 >

この作品をシェア

pagetop