怪談短編集


 鼻をつく血とアルコールの混じったような臭いで僕は目を開けた。

 ここは…??

 僕は手を動かそうとして、動かせないことに気付いた。足も、同じだ。

「起きたか。起きなければ、楽に終わったのにな」

 サラリーマンのおじさん、だよね?目の前にいるのは。

 あの、真面目そうな雰囲気とは一変したおじさんが、僕を見下ろしている。声を出そうにも、出せない。口をふさがれてるんだ。長時間、縛られてたのか。

「じゃあな、小僧」

 直後、腹に鋭い物が突き刺さった—。

 夢だと信じたい。だけど、この痛みは厳しい現実を突き付けてきたんだ。

 意識が、遠のいて行った。

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