トラック野郎と君
「……はよ洗って着替えや。娘が、待ってるで」

「あっ! むっ、娘にはっ……!」

「誰があんな大衆の中ですんねん(笑)」

 俺はそれだけ言うと、ドアを閉めた。

(う~ん……、まぁ。年のわりに……、という程度か。どせなら、娘の方が面白かったかもしれへんな……)

 通路を歩いていると、娘がこちらに向かってきていた。慌てて時間を確認。あれだけ気をつけたはずなのに、20分以上も経ってしまっていた。

「あの……お母さん……」

「今出てきてたけどな、なんか、タオル忘れたゆーて、取りに戻ったわ。コーラは? もう飲んだ?」

「あ、はい……。ありがとうございました」

「ええねん、ええねん。ジュース一本くらいで(笑)。それより、腹減ってへん? オッサン、腹減ってんねや。何か一緒に食おか?」

 その後、母子とは何事もなく別れた。交換条件のシャワー室での、一時。

(ちょっとええ思い出やな……)

 これで、誰にも喋らなければ、物語が少しは美化されたのかもしれないが、酔うとついつい、口に出てしまうのが悪い癖だ。

 まさか、10年経っても、同じ自慢話を、若い女の子にまでしてしまうとは、全くもって情けがない俺様である。
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