風味絶佳~嘘からはじまる2人の関係~
俯いていた顔を上げると、フロントガラス越しに目の前の横断歩道を横切る知った顔を見つける。

俺は次いで時計を見た。

おいおい、今何時だと思ってるんだ?

もう深夜12時を過ぎてるじゃないか?

俺は相手に分かる様に車のウィンカーを点滅させる。


香坂薫、かつての俺の部下。


彼女は眩しそうにこちらを振り向いた。

俺は窓を開けて彼女に見える様に手を振った。

「香坂さん、今帰りか?」

彼女は幾分驚いた顔をしていた。

半年振り、俺が設計部を去って以来だ。

「安曇さん・・・??」

彼女は小さな声で俺の名を呼ぶ。

懐かしな、この声。

「乗りなさい、送っていく。」

そう言って俺は、彼女を自分の車に招き入れた。





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