魔王に甘いくちづけを【完】
とても真剣な瞳・・・・。

やっぱりあの声はラヴルだったの?

でも、どうして?

あの女性のお客様は・・・。


見下ろしてるラヴルの漆黒の瞳。

妖しく光っていて怖いけれど、気のせいか、とても心配げに見える。


もしかして、本当に心配してくれていたの?




「ラヴル、どうしてここにいるの?確か、女性のお客様がいたで――っ」



背中にまわっていた腕に力が入り、グイッと体が起こされた。

急に起こされたためか、軽い眩暈が起こり、言葉が途中で途切れてしまった。

くらっと揺らいだ頭が素早く支えられ、広い胸にぐっと押し付けられた。

さっきまで手を握っていた方の手も、いつの間にか背中にまわりこんでいる。


徐々にラヴルの腕の力が強まっていく。

動こうとしても1ミリも動けない程に強く抱き締められている。



――何だか、ぎゅうぅなんて音が聞こえてきそう。


包み隠さず話せと言われても。

胸がドキドキする上に、とても息苦しくて。

このままでは落ち着いて話が出来ないわ。

どうしたらいいのかしら・・・。



「ラヴル、もう少し、力を緩めて・・・」


思い切って出した声が掠れている。

息も絶え絶えに、なんとか緩めて貰おうと交渉するも、逆に、何故かどんどん力が強くなっていく。


もしかして、このまま絞め殺すつもりとか・・・?

でも確かあれは逃げた場合のことで・・・今は違う・・・はず。



「ラヴル、・・・あ・・あの、離してください」


「駄目だ、離すつもりはない。このまま、私の質問に答えろ。それ以外で、その唇を開くことは許さん」



有無もない強い言葉。

耳の傍で低く静かに発せられたラヴルの声が、鼓膜を優しくくすぐる。

耳朶に息がかかり、体が痺れるような感覚に襲われる。




―――何が起こってるの?

どうしてこんなに、息も出来ないほどに強く抱き締められてるの?


あの女性はもう帰ったの?

恋人に見えたのに、私なんかに構ってたらいけないじゃない。


半ば意識がもうろうとし始め、ハテナマークがぐるぐると渦を巻き始めた。


おぼろげにラヴルの声が聞こえてくる。


「このまま・・・ユリア、私は――――」
< 98 / 522 >

この作品をシェア

pagetop