君色Diary
少しだけ、モヤモヤとし始める胸。

それに、無意識のうちに不安な表情をしていたのか、葉月は悪戯に微笑んで。



「皆で行けるかは、七海次第だよ。なんてったって、言いだしっぺなんだから」


「……えっと」


「だから、学校に来て、花火大会までには、空と仲直りしてね」



葉月はそう言うと、「それじゃ!」とカバンを持つと、あたしが止める暇もなく、部屋から出ていく。

その俊敏さにポカンとすれば、下からお兄ちゃんと、葉月の声に、ガチャッと開く、ドアの音が聞こえて。


……言い逃げだ……。



「……今度こそ、頑張らないと」



クスッと小さく笑いながら、手にした髪留め。

それをキラッと光にかざしたら。


手帳と髪留め、その二つを、あたしはギュッと抱きしめた。



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