君色Diary
「あのさ、七海……。嬉しいんだけど、簡単にそういうことするから、俺が我慢するの、大変になるんだけど?」


「え……?」


「俺、我慢しなくてもいいわけ?」



ワケがわからず首を傾げれば、空くんは呆れたようにため息をつく。

そして、片手を頬にあてられたかと思うと、またそっと唇に触れて。


あ………。

もしかして……そういう、こと……?



やっと意味を理解すれば、かぁぁっと染まる頬。

その熱を手で感じ取ったのか、空くんは俯き加減だった顔を上げると、きょとんとしながらあたしを見て。


恥ずかしい……けど、空くんなら……。

空くんなら、あたしだって………。



ドキン、ドキンと鳴る胸。

もしかしたらそれは、告白するときよりも緊張しているかもしれない。

でも、恥ずかしくても、そう思うことは事実だから……。



「……我慢、しなくても……いい、よ……」



呟くようにそう言えば、驚きで見開かれる空くんの瞳。

それでも逸らさずに、ジッと空くんを見つめれば、頬にあった手は、そっと後頭部に移動して。



「……もう知らね」



そのまま、グイッと手に力が入った。



< 350 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop