君色Diary
「これやるから、こっち来て。とりあえず基礎からやるから」



声の方へと振り返れば、問題集を見つけた空くんが手招きしていて。

それに逆らうこともできずに向かおうとすれば、そっと耳元で葉月が囁いた。



「空が好きなら、数学も頑張らないとね?」


「……!!?」



一気に熱くなる頬。

驚きでバッと振り返れば、葉月は悪びれた様子もなく、ふんわりと微笑んで。

その隣では、ヘロヘロになりながらも、陽向くんが必死に問題を解いていた。


……そうだよね。

陽向くんだって葉月の元で頑張ってるんだから!

あたしだって、空くんに近づくためには、数学頑張らなくちゃ……!



単純なあたしは、それも葉月の策略と気づくこともなく、

ニコニコと楽しそうに笑う葉月の隣で、両手をギュッと握り締めたのだった。



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