恋のレシピの作り方
第十四章 ルサールカの誘惑
 遠くで誰かの声が聞こえたような気がした。浮いたり沈んだりする意識が次第に鮮明になっていくと、瞼の裏が眩しいことに気がづきうっすら瞼を開く―――。


「ん……」


 奈央はぼやけた視界にしばらく意識が飛んでいたが、見慣れない天井にガバリと身を起こした。


「こ、ここは……」

 自分の部屋ではないことは瞬時に理解した。ならばどうして自分はこんなところにいるのか?

 とその時―――。

「Bonjour」
<おはよう>


「!?ッ」


 奈央はギクリとして声のする方へ顔を上げると、そこにはたった今シャワーを浴びたばかりの一条が、腰に白いバスタオルを巻いて濡れた髪の毛をガシガシと拭いていた。
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