恋のレシピの作り方
第二十一章 オーディンへ捧ぐもの
(人を好きになってる場合じゃない……私だって、忙しいんだから)


 奈央は刺が刺さってチクチクと疼く気持ちを、自身で宥めながらロビーまで下りてきてしまった。そして、一条に何も声をかけずに出てきてしまったことを思い出した。


(ちゃんと会って、挨拶くらいしてくればよかったかな……昨日はお世話になったんだし)


 一条を思うと、先ほどの麗華とのやり取りや、一条と麗華の関係が交錯して、胸を締めつけるような切なさがこみ上げてきた。けれど、奈央はおおげさに頭を振って、その光景を霧散させて自身を奮い立たせた。


(やっぱり後で電話入れておこう)


 そう思い直して、エントランスから出ようとした。

 ―――その時。
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