恋のレシピの作り方
(私、一条さんに何がしてあげられるんだろう……?)

 その時、ふと麗華の言葉が蘇った。

 ―――あなたは彼をダメにする。

 思いのほか麗華のあの言葉は、奈央の胸の奥まで突き刺さった刺が抜けないでいた。

 ―――その時。


「司の事が気になりますか?」

「え……?」


 不意に背後から声をかけられて奈央は慌てて振り向くと、いつの間にか一条と話を終えた羽村が眼鏡のブリッジを軽く指で押し上げて立っていた。

「すみません、ちょっとボーッとしてました」

「それはいけませんね、仕事には集中していただかないと……」

「はい……」

 奈央の声のトーンを不審に思ったのか、羽村が訝しげにしている。奈央は慌てて気丈に振舞おうとしたが、何故か口から出た言葉は不本意なものだった。


「なんだか、最近の一条さん……なんとなく前と雰囲気が違うような気がするんです。その……なんとなく、元気がないというか―――」


「まぁ、気のせいってこともありますから、あなたはあなたで頑張ってください」


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