恋のレシピの作り方
 仕事を早めに終え、奈央は約束の時間にロビーへ向かうと、すでに羽村は待っていた。
 普段シェフコートの羽村しか見たことがなかったためか、私服姿の羽村に奈央は一瞬、目を瞠った。


「春日さん、こっちです」


 奈央に気づくと、手にしていたコーヒーカップをローテーブルに置き、時間を確認すると、今まで後ろで一つに束ねていた髪の毛を解いた。何故かその仕草に奈央の心臓が反応してしまう。



「タクシーを待たせてありますから、行きましょう」


「は、はい……」


 羽村は、一条とはまた違った色気のある男だった。

 冷静沈着で、常に凛然としている様は、奈央も一目置いていた。そして、睨まれると物怖じしてしまいそうな切れ長の目が、皮肉にも端整な顔立ちを引き立たせていた。


(そういえば、羽村さんの私服姿なんて初めてみたかも……)


 シックでモード系の一条に対して、羽村はフォーマルに近い清潔感のある服装だった。きっと私服で一条と羽村が並べば、振り向かない女性はいないだろう。
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