恋のレシピの作り方
 その時、ふと聞こえたのは、ここにいるはずのないあの人の声―――。


 宙に浮かんだMOを掴んだと同時に身体がぐらりと揺れ、先程まで地に着いていた足が宙に浮いた。


「一条さ……―――」


 視界に映る全ての景色がスローモーションで再生される。一瞬、その中に一条の姿を見たかと思うと、突然暗幕が下ろされた。

「奈央ーーー!」


 ―――これだけは守りたい、何があっても。


 身体中に激痛が走って、くらくらするような目眩が収まった時、ようやく自分が階段から転げ落ちたのだとわかった。


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