夢の外へ
そう言った千景に私は考える。

「特にないかな」

考えた末、私は答えた。

「そうか、じゃあいいや」

千景はそれだけ返事すると、部屋を出て行った。

彼がいなくなってしまったとたん、私の心に冷たい風が吹いた。

…そうよね。

お互い、なれあいは禁止だもんね。

だって、形だけの婚約だもの。

上辺だけの結婚をするんだもの。

「間違っても好きにはならないから」

自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
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