キミが望むのなら

甘々Days‐桃香Side‐



それはあたしが専門学校を卒業してから、こっちに戻ってきて、すぐのことだった……



「一緒に暮らすか」


懐かしいこの公園で満月を見上げながら、静かに、でもはっきりとそう言った悠君。


「……へ?」


まさかの提案に、何とも間抜けな声が出る。



「え、えっと……一緒にって……」


「だから同棲だよ。同棲」


「ど、同棲!?」


それって同じ部屋にずっと悠君と一緒に居るってこと!?


いや、嫌なわけじゃないんだよ?



たださ、ずっと一緒ってことは……


「ど、同棲ってどこで……?」


「店の近くのマンションかアパートを借りてさ」


「い、いや……でも……」


「だってさ、桃香がこっち帰ってきたらすぐに結婚するかと思ってたのを、バッサリ断れたんだぜ」


「うっ……」



そう。


あたしはこっちに戻ってきてからすぐに、紺野呉服店で働き始めた。


でも、入社したばかりの新人ペーペーのあたしが、突然4代目と結婚します!なんて、言えるわけがない。



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