【番外編】ルージュはキスのあとで



 ベッドに腰かけた真美を見たあと、リビングからメイク道具を持ってくる。
 いつもより眉を流しめに描いたり、頬紅も少しだけ赤みが強いものをもってくる。

 そして、ルージュ。


 いつもの真美ならベージュ系なのだが、今日は真っ赤な紅だ。

 目を閉じてルージュをひいてもらうのを待つ真美の顔が、あんまりに色っぽくて……理性なんてその瞬間、ぶっ飛んだ。

 そのあとは、そのままベッドに押し倒して真美を堪能した。
 最初こそ、


「花火大会に行きましょうよ!」

「ダメですってば! プレミアチケットが無駄になっちゃいます!」



 そういって抵抗していた真美だったが、浴衣をすべて脱ぎ捨てたあとは俺に翻弄されて啼くばかりだった。
 
 ベランダから、チラリと寝室で眠る真美を見る。
 そして大きくため息をつく。



「起きたら間違いなく小言を言われるだろうな」



 結局、ビンゴの景品でもらった桟敷席のプレミアチケットは、ただの紙くずとなってしまった。

 もちろん花火も……見れなかった。



「来年こそは、花火大会に連れて行ってやろう」



 そして来年こそは、現地集合にしようと心に誓う。
 浴衣姿の真美は、それほどまでに俺の心を揺さぶった。

 人ごみの中で真美に会えさえすれば、今回のように押し倒してしまうこともないだろう……たぶん。

 ―― いや、もしかしたら花火大会とは反対方向に走り出してしもうかもしれない。



「まったく、どれだけ真美が好きなんだよ、俺は」



 ガシガシと頭を掻いて、再び長く息を吐き出した。
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