【番外編】ルージュはキスのあとで




「はぁーーーー!!?」

「彩乃! 声が大きいっ!」



 ランチを食べ終えたあと、会社の近くにある公園に場所を移し、彩乃曰く『すっぴんメイク』の理由を話したら彩乃はひっくり返った。



「ちょ、ちょ、ちょ!!」

「落ち着いてよ、彩乃」

「これが落ち着いてなんていられますかっ! なによ、え? 一体どうなってるの? ってか、えー!?」

「……」


 もうね、苦笑いしかでてこない。
 彩乃のあまりの驚きぶりに、私はハハハと力なく笑った。

 実は、今日のメイクは私がやったのではない。
 長谷部さんが……やってくれたのだ。


「ちょっと待ってよ、真美。ってことはだよ、真美は今日、どこから出社したわけ?」

「……は、長谷部さん……ち?」



 顔が熱い。
 もう恥ずかしくてどうにかなってしまいそうだ。

 それなのに彩乃からの追求はまだ続く。


「ってか、なに? 長谷部さんといつからそんな仲になっちゃったわけ?」

「……」


 実は金曜日です、とはなかなか言えず俯いた。
 どうか、これ以上の追求は勘弁していただきたい。

 わ、私だって、まだ夢みているんじゃないかな? って思っているんだからさ。

 金曜日、進くんとの電話を切ったあと、あれよあれよといった感じで長谷部さんにリードされて……そして……。
 

 わーーー!! もう恥ずかしい。
 なんか自分から求めちゃってたりもしてたよね? 私。

 でも、フワフワして夢心地だ。
 あれから、実は家に帰してもらっていない。

 今日の服装は、長谷部さんちの近くにあるお店で買ったものだ。
 それも、長谷部さんセレクトで。

 止める間もなく、何着も買ってしまった長谷部さんに抗議したのだが、


「この服は、俺の家に置いておけばいいだろう。そうすれば、いつでも泊まることができるからな」

「で、でもっ!!」

「なんなら今日からうちで住めばいい。荷物を取りに行くか?」


 そういって私のマンションへ乗り込もうとする長谷部さんをなんとか宥めて、今に至るというわけだ。

 それにしても長谷部さんってば……絶対に二重人格だと思う。



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