プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「だからって君に甘えたいという訳じゃないから安心していい。勝手だが、僕は黒河社長のことを、弟のように思っているんだ。同じだけ君のことを気にしないでいられないだけさ」

 何でもお見通しなんだな、と私は肩を竦めるばかりだった。

「本社に来たときは、男性秘書がついてくれていた。仕事に関しては精鋭たるもんだがやはり華がないと味気ないもんだね。今頃、やきもち妬きの社長はどうしているかな」

 肩を抱き寄せられ、さあ行こうと促される。さり気なくされると「やめてください」とも言えない。

 すぐにその手を放してくれたのでタイミングも失ってしまった。

 市ヶ谷副社長もまた潤哉さんのセレブっぷりとは違った育ちの良さを感じる。女子が憧れるのもなんとなくわかる。

 何故だろう。市ヶ谷副社長の人として男性としての魅力だけではない何かが、胸を疼かせていた。

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